コペンハーゲン建築週間
建築に関連した講演会、建築ツアーが組まれていたので、NORD architectsの講演会へ行ってきた。
実際に彼らが設計した建物の中で、講演が行われたので、説明と建築がそのまま直結して体感できる。
中庭
ロビーからベランダを見る、ロビーの吹き抜け
リハビリ室、 外壁
ガン治療のための滞在型小規模医療施設
この施設のコンセプトは大病院のような医療空間ではなく、住宅サイズの医療空間で治療するというコンセプトの下、コンペが行われ、Henning Larsenなどの大きい建築事務所を抑えて、地元のNORD Architectsが勝利し建設された。
この施設は、ガン治療のための滞在型医療施設で、対象は末期がん患者ではなく、ガン治癒の可能性のある患者を対象としたリハビリ施設である。この施設から徒歩10分ぐらいの距離に基幹病院であるRigshospitaletがあり、そのアネックスである。
デンマーク自体がそんなに大きくないため(人口規模で兵庫県、面積は九州ぐらい)、いわゆる大病院もそんなにあるわけではないのだが、滞在型で小規模の医療施設はあまり見ない。
デンマークの医療についてざっくり説明すると、基本、国民にひとりファミリードクターがついており、普段はそのファミリードクターが自分の健康状態を見る。といってもよほどのことがないと、自分のファミリードクターに予約して会いに行くということはない。デンマーク人は風邪ぐらいではもちろん病院に行かず、しかも薬ではなく、カモミールティーで治す。なので、よほどのことがない限り医者には行かないのだが、その場合でも簡単な手術はそのファミリードクターのオフィスでしてしまうので、大病院に行くのは、ある一定以上の複雑な医療が必要な時ということになる。
立地はコペンハーゲンの中心市街地から徒歩で20分ほどの、比較的交通量の多いバス通り沿いにあり、近くには歴史の長いGamles Byという老人向け集合住宅群があり、その端部の敷地に建っている。De Gamles Byは2〜3階建てのレンガ造の建物で、この施設は、外観的にもその建物群と区別するために、ガルバリウム二階建ての建物になっている。
三つの軸をもつグリッドに合わせて屋根の棟が立てられ、道路車線の規制なのか、屋根は大きい道路に近い方から遠い方に向かって低くなっている。それに影響されて、天井高が高い方は運動室など公共の空間に、天井高が低い方は細かく区切られ、検査室などが配置されている。
デンマークの建築というのは、日本と違って、デザインをする建築家と構造などを見るコンストラクションアーキテクトを職域が分かれており、実際の建て方や微妙なマテリアルの指定まではデザインアーキテクトが深く関与して進められることはないようだった。実際、このプロジェクトも公的なプロジェクトなので、建設に関してはなるべく建設費を抑えて効率的な積算を求められていると思う。
デンマークには、大手デベロッパーという業種はなく、大きな建設プロジェクトというのは、クムーネやコンサル会社で進められ、ファンドが集まったら建設するので、デンマークの若手建築家のホームページでプロジェクトを見ると、実際に建設に至っていないことが多い。なので、敷地だけはあるが、いっこうに建設が進む気配がないということもしばしば。。。
デンマークの建設業も事務所も、ある一定のたががあるようで、建築も形状に終始してしまうので、おなかいっぱいにはならないなあー、これでも建築ができるんだなー、と感じてしまう。
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2015/03/31
建築